2016年10月22日

「現代の軍事戦略」新しい戦争

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめられてお り、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

「新しい戦争」とは、ユーゴスラビア内戦やその他の地域で行われた内戦や紛争の解決に対して、国際社会が直面した困難を受けて使われるようになった用語。ゲリラ戦略の締めくくりとして、「新しい戦争」論者と対反乱戦の理論についてご紹介します。

■「新戦争論」メアリー・カルドー
・著書「新戦争論」1999年刊
・1990年代のアフリカや東欧で登場した組織的な暴力の、戦い方や目的や手段が「新しい形の戦争である」と論じた。
クレフェルトと同じように、「新しい戦争」が「国家の統治能力の消耗、国家の崩壊」という文脈から生じている。
・冷戦の地政学的、イデオロギー的な目的の代わりに、新しい戦争では「アイデンティティー・ポリティックス」つまり、特定の民族、部族、もしくは言語的なアイデンティティを基盤にした権力闘争が行われるようになった。
・「新しい戦争」は、別のアイデンティティーを持った人間を全て排除することによって政治的コントロールを獲得しようとするものであり、これは住民の追放や強制移住、そして大量虐殺などの手段を通じて行われる。この現象は「民族浄化」という言葉によって広く知られるようになった。

■ルパート・スミス
・NATO軍のアライドフォース作戦時の副最高司令官。
・著書「ルパート・スミス 軍事力の効用:新時代 戦争論」2005年刊
・工業化した国家同士が戦う「対称的な戦争」から、「軍同士が交戦するような戦場が存在しなかったり、すべての交戦者の中に必ずしも軍隊が含まれるわけではないという事実が反映された、人間戦争」へとシフトしたと論じた。
・「街や家や畑にいる市民たちがすべて あらゆるところにいるすべての人間が 戦場であるという現実」
・(紛争に介入する)NATOのような戦う組織の目的が、「政治的な成果を決定できる具体的な目標の奪取から、成果を決定する条件を作り出すことへと変化している」
・このような条件をどのように作るべきかは、当時から現在までも答えは出ていない。

■デビッド・キルカレン
・オーストラリア軍の中佐。ペンタゴンでも対反乱のアドバイスを行う。
・冷戦後の反乱の特徴は、革命的な目標やその質にあると指摘。
・反乱の古典的理論では、一国の中の非国家主体と政府の間で発生し、その最終目的は国家の支配を勝ち取るとろこにあると想定して扱われてきたが、現在の反乱の多くは、ただ単に国家を破壊しようとするだけであり、統治権を奪取するところまでは狙われていない。
・「偶発的なゲリラ」よそからやって来た過激主義者と現地住民が親密になって、ついには地元住民が武器をとって過激主義者と一緒に戦う「偶発的な」ゲリラになってしまう、感染症のような4つのプロセスを提示。

■FM3-24 ペトレイアス
・元米陸軍大将。
・アメリカの対反乱ドクトリン「米陸軍・海兵隊対反乱野外教令」(通称FM3-24)を2006年に発行。
・FM3-24は古典的な対反乱アプローチが支配的。特に注目を集めたのはパラドックスの部分。発行当時は非効率的な殺傷的アプローチが支配的だった為。

パラドックスとは、例えば・・・

「部隊を防護しようとすると、ますます安全ではなくなることがある」軍の部隊の安全を確保しようとして部隊を宿営地の中に留め、住民の中に入っていかせないと、作戦の成功に必要な情報に触れるチャンスが減少してしまう。

「軍事力を使えば使うほど効果が薄れていくことがある」軍事力を行使すればするほど付随的被害や間違いが発生しやすくなり、反乱勢力のプロパガンダに使われる材料が増えることになる。

「対反乱作戦が成功するほど、使用できる武力が少なくなり、容認すべきリスクも増加することになる」対反乱作戦が進展するにつれて、警察的な任務の方が増え、兵員はより厳しい交戦規定に従わなくてはならず、より大きなリスクが対反乱に伴うことになる。

・また、「現地住民の安全確保」は対反乱の中心的な教訓とされた。


「現代の軍事戦略」のご紹介は今回で一旦終了します。「サイバー戦略」「核戦略」「スペースパワー」については、時機を見て掲載の予定。
本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書類を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれると嬉しく思います。


  

Posted by もじゃもじゃ  at 10:00Comments(0)現代の軍事戦略

2016年10月06日

現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦以降

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめられてお り、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

さて、今回は「ゲリラ戦の理論 ~冷戦後」としまして、クレピネビッチ、ファン・クレフェルト、リンド、ハメスを紹介します。


■アンドリュー・クレピネビッチの反乱、対反乱作戦
・本ブログの「ランドパワーの理論 現代編」でもご紹介した、アンドリュー・クレピネビッチ(米陸軍退役中佐)は、「米陸軍とベトナム」(1986年刊)の中で、「米軍はベトナム戦争の本質をとらえることに失敗した」と正面から指摘した最初の人物の一人。
・対反乱作戦では現地住民の「心と信頼をつかむ」ことが重要であり、その為には政府の多くの機関の協力が必要であり、軍はその中のたった一つの機関に過ぎない。
・クレピネビッチの功績は、2010年代には一般的であるが、1986年時点では注目されていなかった下記の事柄を指摘した点にある。
 ①反乱・対反乱戦が通常戦とは大きく異なるものであること。
 ②米陸軍が対反乱で戦えるよう訓練・組織化されていなかったこ  と。
 ③米陸軍が将来最も直面しそうなのは、低強度戦や対反乱戦であ  ること。


■現代3大軍事戦略家 マーチン・ファン・クレフェルト
・グレイ、ルトワックと共に現代の3大軍事戦略家の一人。エルサ レム大学の学者。
・将来の戦争は国家主体ではなく、非国家主体の戦争になると指摘。クラウゼヴィッツ的な世界観による三位一体戦争(国家+国民+軍隊)というのは、「戦争は主に国家、厳密にいえば政府により行われるもの」という前提であったが、この時代は終わりをつげ、「非三位一体型」、もしくは「ポスト・クラウゼヴィッツ式」の戦いに取って代わられつつある。


■リンドの第四世代戦
・非三位一体式戦争の視点から第四世代戦を提唱。近代史における戦争は、三つの特徴的な「世代」を経て発展してきており、現代は「第四世代」にうつりつつある。
・「第四世代」は、戦場におけるさらなる分散化、作戦の速度とテンポの向上、集中化された兵站への依存度の低下、機動と分散のさらなる強調、小規模でより機敏な部隊、はっきりした前線や戦線のない「非線形」な戦い、統合作戦への依存度の増加といった要因によって特徴づけられる。
・非国家主体による「第四世代戦」の指標として、「敵の前線から後方への焦点の移動」と「敵の強みをそのまま対抗手段として使う」の2点がある。「敵の前線から後方への焦点の移動」は、非国家主体のテロリストは、直接敵軍隊を戦うのではなく、その後方(敵軍隊の母国)にいる一般人をターゲットとするということ。「敵の強みをそのまま対抗手段として使う」とは、敵(主に西側自由諸国)の社会の自由とオープンさを利用し、その社会に入り込み直接破壊活動を行ったり、ネットやテレビのニュースを使って心理戦を仕掛けたり、麻薬を密輸入したりということ。

■ハメス 
・元米海兵隊大佐。著書に「投石器と石:二十一世紀の戦争論」2004年刊。
・第四世代戦は反乱の発展形。
 第四世代戦とは「政治、経済、社会、そして軍事など使用可能なネットワークをすべて使って、敵の政策決定者に対して、彼らの戦略目標は達成不可能であったり、獲得可能な利益はコストがかかりすぎるものである、と信じ込ませることにある。」

以上。
次回「新しい戦争学派」に続きます。


「現代の軍事戦略」をご紹介することで軍事、戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。

  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:28Comments(0)現代の軍事戦略

2016年09月21日

現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦期

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめられてお り、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

さて、今回は冷戦期のゲリラ戦の理論として、ガルーラとトンプソンをご紹介します。
前回のロレンス、毛沢東が、反乱側の理論だったのに対して、ガルーラとトンプソンは仏・英という植民地を支配する側からの視点から「対反乱」についての理論を提唱しています。

■ガルーラの対反乱作戦
・ダヴィド・ガルーラはフランス軍士官として、1950年代にアルジェリア戦争で戦った経験を持つ。
・著書「対反乱作戦:理論と実践」(1964年刊)の中で、対反乱の原則と具体的な行動指針を記している。
・「第一の法則」
 対反乱側には地元住民からの支持が(反乱側と同じように)、必須である。反乱側勢力を武力で排除することは難しくないが、排除した後の状態を維持するには、住民の支持がなくてはならない。
・「第二の法則」
 住民からの支持の獲得を中心としたもの。「単に同情や承認を得るだけでなく、反乱勢力に対する戦闘への積極的な参加をいかに得るかだ」
・「第三の法則」
 (協力してくれる)住民に対する(反乱側の)報復の脅威を解消するためには、反乱勢力や彼らの政治組織に対する軍・警察の作戦の成功が必須である。住民の安全が第一に確保されなければならない。
・「第四の法則」
 (ガルーラが著書に記した)手段や作戦は、徹底的かつ長期に渡るものでなければならない。
 国全体で一気に実施することはできないとしても、地域ごとに連続して実行されなければならないのである。
これは近年になって「油のシミ」アプローチとして知られるようになっている。



■トンプソンの対反乱作戦
・英空軍士官。50年代のマラヤ、65年以前のベトナムでの実戦経験がある。
・著書「共産主義反乱の打倒」(1965年刊)の中で、問題の解決は、治安維持の手段だけでなく、反乱に関わるあらゆる政治、社会、経済を含めた全般的な計画の文脈の中で考えるべきものであると主張。これは、現在の「政府全体」「包括的な」アプローチに似たもの。
・「ゲリラを国内法の保護の外で対処したいという誘惑は大きいが、それでも対反乱作戦はあくまで法の下で実行すべきである」
 これができなければ、支配を再確立しようとする政府の長期的な正統性(レジティマシー)が崩れてしまう。
・トンプソンもガルーラと同様に、対反乱の主要なターゲットは住民であるとしている。また、「油のシミ」アプローチは人口や経済活動の多い都市部から始めていくべきとしている。



次回は冷戦後のゲリラ戦の理論として、1980年代から多く出てきた「反乱、対反乱」「新しい戦争」についてご紹介します。


「現代の軍事戦略」をご紹介することで軍事、戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。

  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:28Comments(0)現代の軍事戦略

2016年09月09日

「現代の軍事戦略入門」 ゲリラ戦の理論 古典編

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめてお
り、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれてい
る一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

さて、今回は「ゲリラ戦の理論」の古典編。
タイトルは「ゲリラ」だが、実質的に内容は「非正規戦の理論」と
なります。
「非正規戦」とは、敵対する国家の組織的な軍隊同士による「通常戦」や「正規戦」ではない、ということ。少なくとも一方が「非国家主体」であることが前提となるタイプの戦いである。

非正規戦の理論の古典としてご紹介するのは、コールウェル、(ア
ラビア)のロレンス、毛沢東である。


■植民地戦争におけるクラウゼヴィッツ C.E.コールウェル
・英陸軍大佐。1880年代から1890年代にかけて、アフガニスタン、
クレタ島、南アフリカで実戦に参加。
・「小規模戦争:原則と実践」という著書で、非国家主体の敵との
戦いの一般法則を、正規軍(対反乱)の視点から、確立すべく試み
た。
・コールウェルの格言の多くは、「小規模戦争」の軍事作戦における多くの戦術レベルの要素、補給や情報に至るまで詳細に触れられており、時を超えて有益性が実証されてきた。
・しかし、反乱勢力を物理的に排除する手段に集中しすぎていた。


■反乱とローレンスの思想
・アラビアのロレンスとして有名な英陸軍士官。
・オスマン・トルコの支配に対するアラブ反乱(1916年~1918年)にアラブ側の遊牧民たちと行動を共にし、「知恵の七柱」という著書で反乱側からの視点でその実践と本質を書き残す。
・大きな特徴としては、敵の殲滅よりも現地住民の支援を重視していた。「活動的なのはたった2%だけだとしても、あとは行動を裏切らないよう黙って支持を与えてくれる友好的な住民の存在。」が必要だと書き残している。
「ある一地方の住民に自由という”我々の理想のために死ぬ”ことを教えることができれば、その地方をものにすることができよう。敵がいるかいないかは二次的な問題にすぎない。」
・また反乱勢力の参加者個々の重要性を特筆しており、彼らを集団として見るのではなく個々の人間として見るべきだとしている。
・戦術については、「軽打してすぐに逃げる(tip and run)」であるべきとし、最小規模の部隊を最も遠い場所で最も迅速に使用するべきだと主張。そして、戦術的には迅速でも、戦いそのものは長期にわたって続け、敵の消耗を通じて勝利を狙うべきだとしている。


■毛沢東の反乱についての思想
・中華人民共和国の建国者。「反乱側」の視点から、革命戦争の基礎文献「遊撃戦論」を著した。
・革命戦争とは、国内で発生し、武力によって政治権力を奪うことを意味している。
・革命戦争の3つの「段階」。国際的に、革命戦争の進行状態を示すのに使われている。
 ①隔離された地域で根拠地を確立し、そこの住民を革命戦争に参加するよう説得する。
 ②敵に対する限定的な武力行使。テロリズムやサボタージュの戦術使用を含む。
 ③ゲリラ部隊をより伝統的な軍隊組織へと変化させ、通常の戦闘によって敵軍と交戦できるようにする。
・住民からの支持を重視。「民衆は水でゲリラは魚であり、この魚は水の外では生きていけない。」
・実際の作戦に関しては、敵が進軍してくるときには撤退し、止まった時に嫌がらせを行い、敵が疲れたときに攻撃を行い、敵が撤退したときに追撃するという、孫子の影響を受けている。
・ロレンスと同じく数年に渡る長期持久戦を想定。「ゲリラ戦では”決戦”などというものは存在しない」



以上、次回は冷戦期の「対植民地・対反乱の理論」についてご紹介予定です。

本書をご紹介することで軍事戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。



  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:28Comments(0)現代の軍事戦略

2016年08月25日

「現代の軍事戦略入門」エアパワー現代編 その2

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

本書より、前回のエアパワー1990年代に続き、2000年代のエアパワー理論を要約してご紹介します。

■概 略
・2000年代のエアパワー理論は主に、90年代のエアパワー理論の枠組み(戦略的効果、斬首、懲罰etc)をさらに議論を深化させたものと、新しいものとしてはアフガニスタン式の現地部隊+西側特殊部隊+エアパワーの統合的使用に関する議論がある。


■エアパワーの戦略的効果?
・セルビアに対してNATO軍が行なった78日間の爆撃「アライドフォース作戦」。この作戦では、エアパワーによる爆撃のみで、地上軍を派遣することなく勝利を得た史上初の作戦となった。一部の専門家は、ドゥーエが唱えた「エアパワー単独による勝利」に近づいたと考えた。
・しかし、その後の研究によると、エアパワーは確かにその時に使用された唯一の軍事力であったが、同時にNATOによる地上戦力投入の脅し、セルビアエリート層への経済・外交面での圧力、セルビアの国際政治的な孤立等が指摘されており、「エアパワー単独による勝利」をアライドフォース作戦が証明したことにはならない、と現在では認識されている。

■懲罰の有用性
・懲罰とは敵国の敵国の商業・工業的施設に対する爆撃。爆撃により物質的・精神的に打撃を与え、敵国の一般市民=非戦闘員を「懲罰するというもの。その結果、爆撃された市民の怒りが自国政府に対して起こり、政権が存続できずに、戦争が終結するというのがドゥーエの考え方。
・しかし、この考え方は、第二次大戦時のドイツによるロンドン空襲により、間違っていることが証明された。ロンドン市民の怒りはドイツに向けられたからである。
・冷戦後のアライドフォース作戦では、しかし、この懲罰が効いたように見え、専門家の中には、効果があると結論づけた者もいる。
・一方、湾岸戦争では、五週間にわたる爆撃でもイラクの精鋭部隊はまだ戦う意思をもっていた。空爆によって彼らの士気を叩くことはできなかったのである。
・このように懲罰の有用性については、まだ議論が続いている。


■継続的監視
・航空阻止とはエアパワーによる敵インフラの破壊や、地上・洋上の敵戦略の破壊を目的としたもの。
・航空阻止については、戦略的な効果があると認められている。
・しかし、ペンタゴンのデータを元にした分析によると、動かずに防御を重視する敵部隊を発見することは、砂漠という開けた環境の中でも難しく、ましてやセルビアのような山岳地帯ではさらに難しく、そのうえ囮と区別することは腹立たしいほどに困難だったという。
・その後、無人機の発展、多くの情報の一元化等により、かつてないほど明確な情勢認識を生み出せるようになった。
これらの進化は「継続的監視」という新しい概念の登場につながっている。
・アフガニスタン戦争では「継続的監視」がIED(道路上の即席爆発装置)への警戒から、さらに重視されるようになった。さらに継続的監視は、精密攻撃と合わさり「無人機による戦闘」という新しいエアパワーの概念につながり、CIAによっても用いられるようになった。

■斬 首
・斬首とは敵の重心(軍の司令部や政治的意思決定機関等)を精密攻撃によって、ピンポイントで破壊することを狙ったもの。
・専門家からは効果がないという警告があったにも関わらず、(一撃で敵を叩ける)その魅力から、サダム・フセインを狙った「衝撃と畏怖」作戦、タリバンのリーダーを狙った「不朽の自由」作戦が実施された。いずれも失敗。
・斬首攻撃は、正確かつタイミングの良い軍事的な諜報に多くを依存しており、また空爆が成功したとしても次の指導者がこちらが望む方向に政策転換するか予測することができないため、成功につながるとは言い切れない。

■新たな挑戦
・2000年代初期のアフガニスタン戦争、イラク戦争において、エアパワーと地上部隊との統合作戦は質的に新しい時代に入った。エアパワーのテクノロジーの進化により、エアパワーとランドパワーが同時に使われた場合は効果がさらに上がるようになった。
・新しい枠組みとして、現地の部隊(米軍ではない)とアメリカの特殊部隊、そして精密誘導兵器で武装したエアパワーとの組み合わせで、アフガニスタン式といわれる。アフガニスタンでは、米軍の特殊部隊と北部同盟+エアパワー、イラクでは、米軍特殊部隊とクルド人部隊+エアパワー、リビアではNATOが同じような方法をとった。
・専門家の間では、効果があるとするものと、主に現地部隊の能力(の欠如)による危険性を指摘するものとで意見が分かれている。





以上でエアパワー編は終了です。
次回すこし時間をあけてから「ゲリラ戦の理論」をお届けする予定です。


  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:28Comments(0)現代の軍事戦略

2016年08月13日

「現代の軍事戦略入門」エアパワー現代編

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

少し間が空きましたが、今回は古典編に引き続き、エアパワー現代編として、1990年代のエアパワー理論をご紹介します。

■概 観
・1990年代はドゥーエの「戦争をほぼ、もしくは完全に単独のエアパワーによって勝利することができる」という理論が具現化したかのような湾岸戦争によって始まり、NATO軍がコソボ周辺で行った爆撃のみによって史上初めて軍事的・政治的勝利を収めるという紛争によって終わった。果たして、エアパワーのみで戦争に勝利することはできるのか?


■パラレルアタック ジョン・ワーデン
・米空軍退役大佐。湾岸戦争の爆撃計画を作成。
・敵を「特定の重心を持って機能しているシステムであり、敵の重心をうまく叩くことができれば相手を降伏させることができる」と論じた。
・「五環モデル」彼は、これを五つの戦略の環を持つ同心円として表している。同心円の中心にあるものが最も重要なもの国家の指揮系統の環であり、2番目に戦争遂行のインフラとなるエネルギー関連(石油やガス等)、3番目に同じくインフラの橋や道路、鉄道、4番目に食料として国民や農業、最後が陸上に配備されている軍事力。
・ワーデンは5つの各円にある標的に対して同時的に攻撃を行うことによって、その効果は急激に増大し、敵を降伏させることができると論じた。後にこの攻撃を「並列攻撃(パラレル・アタック)」と名付けた。


■懲罰、拒否、そして斬首 ロバート・ペイプ
・著書「勝つための爆撃:戦いにおけるエアパワーと強制」の中で、航空作戦を「戦略爆撃」と「航空阻止」の2つに分類。
・さらに「戦略爆撃」を「懲罰」「拒否」「斬首」の3つに分類。
 「戦略爆撃」とは、敵の政治や経済の中心地近くの固定化された、軍事、産業、民間施設を狙ったもの。
 「懲罰」とは、敵国の市民に懲罰を与えるものであり、これによって爆撃を行う側の要求を飲むようになるまで、抵抗を続ける側が支払う社会的コストを引き上げることを狙ったもの。例えば、第二次大戦時のロンドン、東京への爆撃等一般市民を狙った爆撃。
「拒否」とは、抵抗をする側が政治的・領土的な目標を達成する際に必要となる軍事的能力を発揮させないことを狙うもの。例えば、兵器工場や、戦争遂行に必要な希少な天然資源を狙うこと。兵器のピンポイントの正確さが必要となる。
 「斬首」とは、敵国の政治の中心にある通信ネットワークや、司令部といった施設、石油精製プラントのような国家経済のインフラの結節点、を叩くことによって、その国家は崩れ去るという理論。
・ぺイプは「懲罰」や「斬首」には効果がなく、無意味であると主張。エアパワーは「戦場で敵軍を倒すために、友軍の陸軍と戦域の空軍が支払わねばならないコストを減少させることぐらい」であると述べている。


■元ソ連空軍の研究家 ベンジャミン・ランべス
・ランド研究所において長年エアパワーの研究を続けるスペシャリスト。
・エアパワーの潜在的な戦闘力がテクノロジーの発展によって、他の軍種のものと比べて劇的に上がった。
・湾岸戦争でエアパワーが証明したのは「戦力投射」「スタンドオフ精密攻撃」「状況認識の拡大」である。
・「戦力投射」(軍隊を米本土から戦地に移動し、維持すること)以前は艦船によって行っていたものを、新型の戦略貨物輸送機によって、空軍が行えるようになった。艦船に比べて時間が数日・数時間単位まで短縮が可能。
・「スタンドオフ精密攻撃」衛星による誘導で精密度を劇的に上げた兵器によって可能となった。
・「状況認識の拡大」衛星や無人機、特殊な有人機によって可能となった。状況認識の高まりにより、作戦上の状況についての知識がほぼ完全な状況で取得可能になっただけでなく、敵軍に対して同じ情報を取得させないことによって「情報優勢」が可能となった。


次回エアパワー現代編 2000年代の理論に続きます。
  

Posted by もじゃもじゃ  at 10:00Comments(0)現代の軍事戦略

2016年07月22日

「現代の軍事戦略」エアパワー古典編

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

今回は、本書よりエアパワー古典編として、ドゥーエの戦略思想をご紹介します。

■空だけで勝利!? ドゥーエ
・ジュリオ・ドゥーエは1920年代のイタリア陸軍の将軍。
・エアパワー登場初期から「エアパワー単独で戦争に勝てる」という考え方を提唱。独立空軍の創設を訴えた。
・エアパワーは、陸軍や海軍のように地形や海岸線等の影響を受けることなく、自由に行動が可能であり、地上に兵士を送り込む
 ことなく(自軍の犠牲者を出さずに)戦闘が可能であると主張。その思想は、当初から身内のイタリア陸軍内はじめ各所で議論を巻き起こした。

・代表的著書「制空」
 ①「制空」における第一の要則
  「戦闘行為の勝利は制空を達成することに絶対的に依存している。」
  制空とは敵の飛行を阻止しながら、自分たちは飛べる状態にあること。現代では「航空優勢」と呼ぶべきもの。
  制空権を獲得している側は自国を完全に守ることが可能、一方獲得していない側は人間の創造を絶するような攻撃にさらされることになる。
 ②「制空」における第二の要則
  制空のためには、敵の航空兵力を地上から飛び立たぬうちに破壊したり、航空兵力の装備や物資を供給する企業や工場を爆破すべきである。
 ③「制空」における第三の要則
  敵の重心は「国民」である。航空勢力により、敵国民を爆撃し、パニックに陥れ、精神力を喪失させ、それによって敵政府に対する反乱を引き起こし、戦争を終わらせることができる。ドゥーエはその為には、毒ガスを使うことも主張した。

■ドゥーエの誤り
・ドゥーエの理論の多くは、第二次大戦によって誤りが証明されてしまった。
・レーダーや対空兵器の登場により、航空機は自由に行動できるものではなくなった。
・ドイツのロンドン空襲において、イギリスの民間人は忍耐力を見せた。空襲により、人々の怒りは自国の政府ではなく、敵であるドイツに向けられた。

■それでもドゥーエ
・実戦によって誤りは証明されてしまったが、それでも現代でも通じる議論のカテゴリーや注目すべき要点を作ったという意味でドゥーエの戦略思想は重要である。
・そして、冷戦後の10年間にドゥーエの「エアパワー単独で戦争に勝てる」という理論を証明するような大規模な紛争が発生した。

果たして、ドゥーエの理論は誤りだったのか、それとも現代のテクノロジーによって、ようやく正しさが証明されたのか?
冷戦後の理論については、次回ご紹介する。

アマゾンで買えるドゥーエの著作「戦略論体系(6)ドゥーエ」


Art by Chris Foss



  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:28Comments(0)現代の軍事戦略

2016年07月17日

現代の軍事戦略 ランドパワー現代編

もじゃもじゃです!


「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までをコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

今回は本書より、ランドパワーの軍事戦略・現代編として、冷戦期以降の陸の軍事戦略をご紹介。
まず、まとめで流れを概観し、その後、ランドパワーの現代の戦略家について、簡潔にまとめました。


まとめ 冷戦期以降のランドパワー戦略思想の特徴

 ①現代のランドパワーは、小規模でより機動性が高く戦場に分散しているが、情報テクノロジーの発展により効率よく運用される。
 ②通常戦における地上戦は、本質的に非線形の、同時性と同期性をもつ作戦によって特徴づけられる。集中の効果は、情報テクノロジーと精密兵器によって達成されるため、地上部隊の占有面積は減る。
 ③通常戦における地上戦は、「統合的」な活動であり、地上部隊は統合部隊の他の構成要素と密接にリンクされるべき。
 ④テクノロジーは地上部隊の司令官が「丘の向こう側を見る」能力を劇的に上げるが、それらは戦争の「霧」と「摩擦」を消滅させることはできない。
 ⑤行動の決断は末端の部隊にまで任されることになり、下級将校や下士官レベルまで戦いを「戦略的に」理解することが求められる。




■RMAの先駆け アンドリュー・クレピネヴィッチ
・元米陸軍士官
・彼が用いた軍事技術革命(MTR)という用語は、後に1990年代の戦略の議論の中心となったRMA(Revolution in Military Affairs)軍事における革命という概念の先駆けとなった。
・同等の力を持つ交戦者同士の戦いは、空や海からの長射程の攻撃が決定的な要素になり、
 空中、陸上、海洋での作戦が互いに融合していく。
・「新しい情報システムは、集中の原則を破って戦力を分散できる」為、軍事作戦が逐次的ではなく、同時的に行われる「分散型」になる。



■画期的なファランクスの解体 ダグラス・マグレガー
・米退役陸軍大佐。湾岸戦争に従軍。
・「脱集中化」の概念に沿った形で「先進的な火器システムを備えた諸兵科連合部隊が、かつてよりも広い範囲の戦域を支配するようになる」という議論を行っている。
・「ファランクス(密集陣形)の解体」という著書で、師団構成が適切な戦闘編成なのか、という疑問を提出。その上で「脱集中化」した地上部隊をどのように編成すべきかを詳細に説明。
・部隊そのものが小規模で自己完結しており、他軍種と統合できる特化したモジュールによって構成されるべき。
・テクノロジーの発展が戦場の時間と空間を変化させる効果を持ち、伝統的な陸海空ごとの戦役の区別は時代遅れとなり、戦略・作戦・戦術という3つのレベルに分かれた概念的枠組みも同様に時代遅れとなる。


■米軍公式文書
・90年代後半から2000年代初めにかけて発表された「ジョイントビジョン2010」「米陸軍ビジョン」「オブジェクティブ・ フォース・コンセプトについての白書」において、公式に、ランドパワーの戦略思想
 を包括的に詳細に述べられている。
・これら文書でしめされた戦いの特徴としては、地上部隊の作戦が「線形」なものから「非線形」なものへ移っているという認識であり、過去のものよりもはるかに機動性を備えた部隊が、戦場全体に分散した
 状態にある。
・非線形な作戦は、分散して非連続であり、戦場全体に分配されていながらも同時に行動を行うようなもの。敵軍を次第に包囲するような過去の段階的で線形な作戦とは対照的に、敵軍全体を航空・地上双方からの
 攻撃にさらすアプローチ。
・部隊を集中させずに集中の効果を上げる。


■求められる兵士像 ロバート・スケールズ
・米退役少将。元陸軍大学校長。
・現代の兵士はには知性と間接性が必要であることを強調。
 過去の直接的で行動志向のリーダーシップとは対照的に、今日の戦いの本質は「間接的リーダーシップ」
 を必要としている。これは「接触による直接的なものではなく、リアルタイムで考え、企図によって
 戦場に影響を与える能力」
・「戦争はこれまでにないほど頭脳ゲームになっている。戦争は相手の意図を読むこと、信頼を構築すること反対意見を説得すること、そして認識を管理すること」が火力とテクノロジーと同じくらいに勝利の要件
 となっている。

以上、次回はエアパワーの理論についてご紹介予定です。
本書をご紹介することで軍事戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。



ART by Chris Foss





  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:00Comments(0)現代の軍事戦略

2016年07月02日

現代の軍事戦略 ランドパワー古典編 その2

もじゃもじゃです。
A.トフラーさんのご冥福をお祈り申し上げます。face06

世界中の戦略家から絶賛される
「現代の軍事戦略入門」(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までをコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

本書をご紹介することで軍事戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。


さて、今回はランドパワー古典編その2として、クラウゼヴィッツとジョミニとご紹介します。
前回の孫子とリデルハートが「間接的アプローチ」とすると、今回のクラウゼヴィッツとジョミニは軍事力の直接的行使を重視した「直接的アプローチ」。

■暴力が戦争のエッセンス クラウゼヴィッツ
・カール・フォン・クラウゼヴィッツ ナポレオン戦争に従軍したプロイセンの将軍。主著「戦争論」
・戦争は暴力行為であり、それには流血と蛮行を含み、敵の破壊への衝動がその中心にある。

チャンスと運
・ 「人間行為のうち、戦争が最もトランプのゲームに似ていると言われる所以(チャンスと運に大きく左右される)がここにある。」

戦争の霧
・情報の不確実性のこと。
 「戦争中に得られた多くの情報は相互に矛盾しており、誤報はそれ以上に多く、さらに大部分は何らかの意味で不確実である。」

摩 擦 
・戦争の遂行というのは、多くの部品によって構成された精緻な機械を動かすことに似ており、それぞれの部品が他の部品と関わっていて、それが摩擦とチャンスにつながる。
「摩擦こそ一見容易なものをして、現実においては困難ならしめる原因である。ある意味で現実の戦争と机上の戦争を一般的に区別する概念である」
※具体的には摩擦とは、遅延や人的ミス、誤解、怠慢等のこと。

均 衡
・敵味方の政治的要求の程度が武力の使用の程度を決定すべきである。
したがって「戦争を始めるにあたっては、戦争によって何を達成し、戦争で何を獲得するつもりなのかをはっきりしていなければならない」
「政治的意図は目的であり、戦争はあくまでも手段である。目的のない手段などおよそ考えられない」
「戦争とは他の手段を交えて行う政治的関係の継続以外のなにものでもない」

三位一体
・戦略レベルにおいて、戦争には「国民」、「司令官と軍隊」、「政府」という3つの力が相互作用として働き、三位一体を構成している。
 3つの力は常に互いの関係性を変化させており、戦争の成り行きに影響を与える。
・「国民」・・国民の間に根源的な暴力、憎悪、敵愾心が存在する。国民に備わっている盲目的自然衝動。
・「司令官と軍隊」・・軍隊の指揮官の勇気と才能、創造的な精神、取り巻くチャンスと蓋然性。
・「政府」・・戦争が政治的な道具として、政府の政治的狙いや戦争の使用に従属すること。

最大限の集中と最大限のスピード、重心
・実際の戦闘の遂行の際の主要な原則「最大限の集中」と「最大限のスピード」
・戦争が決定されるのは常に主戦場であり、それ以外の不必要な時間の浪費や迂回というのは、単なる戦力の無駄遣い。
・集中とスピードの目標が「重心」。すなわち「敵の全体を担う力と運動の中心。」
 ほとんどの場合重心は敵軍の中にあることが多く、次に敵の首都、そして敵の同盟国にある。




■勝利の法則 ジョミニ
・アントワーヌ・アンリ・ジョミニ ナポレオンの参謀も務めたスイス人 主著「戦争概論」
・科学と理性が支配的な啓蒙主義の時代精神に影響を受け、戦争に勝つための原則の発見を目指す。

戦力集中の原則
・ 「戦争で勝利するためには、戦場の決定点に集中させること。その為には、しかるべき時期に十分な力で戦えるように措置しておくこと」

内線作戦線
・敵軍を二つに分断し、まとまっている時よりも弱くしなくてはならない。そのためには、敵軍の中間地点(内線)に位置し、弱点から攻撃し各個撃破していく。 「作戦線の選定は会戦計画策定上の基本重要事項である」
・海上戦の理論にも関心があり、シーパワー論のマハンはジョミニに影響を受けた。


クラウゼヴィッツ関連の書籍(アマゾンへのリンク)
ジョミニ関連の書籍(アマゾンへのリンク)



  

Posted by もじゃもじゃ  at 10:48Comments(0)現代の軍事戦略

2016年06月24日

「現代の軍事戦略」 ランドパワー古典編 その1

もじゃもじゃです!

世界中の戦略家から絶賛される「現代の軍事戦略入門」(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までをコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を理解できる軍事戦略の入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。
本書をベースに軍事戦略への理解を深め、複雑な国際情勢を自分自身で考えられるようにしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略理論書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。

さて、ランドパワー編では、通常戦(例えば、国と国との戦争)におけるランドパワーの戦略をご紹介します。
孫子、クラウゼヴィッツ、ジョミニ、リデルハートの古典的理論をご紹介した後、冷戦後の通常戦の戦略家として、アンドリュー・クレピネヴィッチ、ダグラス・マグレガー、ロバート・スケールズ等をご紹介します。

今回は、古典中の古典孫子と、孫子の戦略を現代に洗練させたリデルハートをご紹介。


■すべの戦いは敵を騙す行為である 孫子「兵法」
・中国春秋時代の思想家孫武の作とされる兵法書。
・「すべの戦いは敵を騙す行為である」欺騙と策略等の間接的アプローチを重視。
 作戦行動が可能でも不可能のように見せかけ、目的地に近づいていてもまだ遠くにいるように見せかける等々。
・軍事戦略の目的は、「天下を無傷のまま手に入れること」であり、理想的には「戦わずして敵を屈服させること」
・戦略レベルでは、敵のアプローチ全体を最初に攻撃せよ。
「軍事力の最高の運用法は、敵の策略を未然に打ち破ること。その次は敵国と友好国との同盟関係を断ち切ること。
最も劣るのは敵の城塞都市を攻撃することである。城塞都市を攻めるという方法は、他に手段がなくてやむを得ず行われるものだ。」
・戦争における精神的影響とリーダーシップの重要性を指摘。


■間接的戦略 リデルハート
・第一次大戦に従軍したイギリスの戦略思想家。
・孫子に傾倒。孫子の通常戦の戦略思想を「間接的アプローチ」として、戦略・戦術レベルの両方で洗練させた。
・「軍事戦略の目的は、敵の抵抗の可能性を減らすことにある。」
 「たとえ決戦がゴールだとしても、戦略の目的は、この決戦を最も有利な状況下において生起させるというものである。その状況がわれにとって有利であればあるほど、それに比例して戦闘は少なくなる。」
・戦術レベルでは敵の抵抗の減少のために、運動と奇襲の利用が必要になってくる。運動は物理的な領域、奇襲は心理的な領域。
 二つの要素が互いに作用して、運動が奇襲をつくり、奇襲がまた運動を推進させる。
・「攪乱」物理的には敵の分断や、補給を危機に陥れたり、撤退経路を脅かすこと。
 心理的には、これら物理的効果によって司令官の頭の中に作られる印象。「しまった!」と感じさせること。
・物理的な要素と心理的な要素が合わさったとき、戦略ははじめて本物の「間接的アプローチ」、すなわち、敵のバランスの
 攪乱を狙ったアプローチとなる。


☆アマゾンで買える孫子関連の本
☆アマゾンで買えるリデルハート関連の本

過去記事:シーパワー 古典編
過去記事:シーパワー 現代編


  

Posted by もじゃもじゃ  at 11:29Comments(0)現代の軍事戦略