2016年04月06日

汝 平和を欲するなら 戦いに備えよ

もじゃもじゃです!

以前紹介した自滅する中国の著者で実務派戦略研究家エドワード・ルトワック氏の代表的著書「戦略論 戦争と平和の論理」を、今回ご紹介。

・本書は8カ国以上で翻訳され、戦略教育の現場で活用されている現代の古典的名著。
著者のルトワック氏はいわゆる学者タイプではなく、各国政府や民間企業のコンサルタントとして現場で活躍している現役の実務派戦略家。(特殊部隊へのアドバイスも行っているとか)
本作が代表作と言われている。

・今回のタイトル「汝 平和を欲するなら 戦いに備えよ」は本書の主要テーマである逆説的論理を簡潔に顕すローマ時代の格言である。ラテン語では「Si vis pacem, para bellum」。
ガンファンにはおなじみのカートリッジ9mmパラベラムの「パラベラム」は、この警句から取られたとか。

さて、「戦略論」の大きな特徴として2点。
①戦略を垂直面と水平面でモデル化。
②戦略の世界は逆説的論理に満ちている。


①戦略を垂直面と水平面でモデル化
・戦略の概念は、垂直面と水平面に分かれる。
・垂直面は下から「技術」⇒「戦術」⇒「作戦」⇒「戦域戦略」⇒「大戦略」によって構成されている。
 水平面は、敵と味方の間で行われる活動の作用と反作用(攻撃と反撃etc)が、垂直面の各レベルで行われる。
・最も重要なのは一番上の「大戦略」。垂直面において、下の「技術」から優れていても、「大戦略」誤っていると戦争には勝てない。
 優秀な兵器と陸軍で戦闘に勝ち続けヨーロッパをほぼ制圧しても、最終的には同盟国の選択を誤った結果敗北したナチスドイツが一例。

②戦略の世界には逆説的論理に満ちている
・逆説的とは、物事を原因、過程、結果と直線的にシンプルに考える一般的な思考モデルとは異なり、対立する相手との相互作用によって物事の形勢が反対方向に転じるという意味。
 戦争におけるひとつひとつの行動はシンプルなものであるが、戦争では敵味方がお互いの手段に対して対抗したり妨害しようとしたりする結果、一般的な「原因→過程→結果」どおりには進まない。
・例えば、人や物資を輸送する際、平時であれば、スピードを出せて大量の人員・物資を快適に輸送できる広くて整備された道を選ぶだろう。
 しかし、戦時には広くて整備された道は、敵にとっても有利であり、待ち伏せや妨害・奇襲等に合いやすい為、平時には非合理的な狭くて険しい道を、しかも夜の雨の日に選んだりする。
汝 平和を欲するなら 戦いに備えよ


本書では、逆説的論理を豊富な事例を交えて解説がなされている。が、一般の人には難解な本である。
文章が難解な上に、ある程度の軍事史の知識が必要だからである。
また、ビジネス戦略書では、まとめ的なページや章があるものだが、本書にはほぼない。

しかし、難解な「戦略論」も同じルトワック氏の「自滅する中国」を副読本として活用することで、私を含めた一般の人にも戦略に対する理解が深まる。
現在、日本をはじめアメリカ、東南アジア諸国の大きな脅威となりつつある中国の動向をルトワック氏の著作を通じて戦略面から理解することで、戦略が生きた知恵となってくる。
興味を持たれた方は、まずは自滅する中国をおすすめする。ちょっと分厚い本は・・・という方にはルトワック氏の最新刊「中国4.0  暴発する中華帝国」から入っても良いかもしれません。

※文中、一部「自滅する中国」解説から引用させて頂きました。




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Posted by もじゃもじゃ  at 12:13 │Comments(0)◎戦略関連

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