2016年07月17日

現代の軍事戦略 ランドパワー現代編

もじゃもじゃです!


「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までをコンパクトにまとめており、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

今回は本書より、ランドパワーの軍事戦略・現代編として、冷戦期以降の陸の軍事戦略をご紹介。
まず、まとめで流れを概観し、その後、ランドパワーの現代の戦略家について、簡潔にまとめました。


まとめ 冷戦期以降のランドパワー戦略思想の特徴

 ①現代のランドパワーは、小規模でより機動性が高く戦場に分散しているが、情報テクノロジーの発展により効率よく運用される。
 ②通常戦における地上戦は、本質的に非線形の、同時性と同期性をもつ作戦によって特徴づけられる。集中の効果は、情報テクノロジーと精密兵器によって達成されるため、地上部隊の占有面積は減る。
 ③通常戦における地上戦は、「統合的」な活動であり、地上部隊は統合部隊の他の構成要素と密接にリンクされるべき。
 ④テクノロジーは地上部隊の司令官が「丘の向こう側を見る」能力を劇的に上げるが、それらは戦争の「霧」と「摩擦」を消滅させることはできない。
 ⑤行動の決断は末端の部隊にまで任されることになり、下級将校や下士官レベルまで戦いを「戦略的に」理解することが求められる。




■RMAの先駆け アンドリュー・クレピネヴィッチ
・元米陸軍士官
・彼が用いた軍事技術革命(MTR)という用語は、後に1990年代の戦略の議論の中心となったRMA(Revolution in Military Affairs)軍事における革命という概念の先駆けとなった。
・同等の力を持つ交戦者同士の戦いは、空や海からの長射程の攻撃が決定的な要素になり、
 空中、陸上、海洋での作戦が互いに融合していく。
・「新しい情報システムは、集中の原則を破って戦力を分散できる」為、軍事作戦が逐次的ではなく、同時的に行われる「分散型」になる。



■画期的なファランクスの解体 ダグラス・マグレガー
・米退役陸軍大佐。湾岸戦争に従軍。
・「脱集中化」の概念に沿った形で「先進的な火器システムを備えた諸兵科連合部隊が、かつてよりも広い範囲の戦域を支配するようになる」という議論を行っている。
・「ファランクス(密集陣形)の解体」という著書で、師団構成が適切な戦闘編成なのか、という疑問を提出。その上で「脱集中化」した地上部隊をどのように編成すべきかを詳細に説明。
・部隊そのものが小規模で自己完結しており、他軍種と統合できる特化したモジュールによって構成されるべき。
・テクノロジーの発展が戦場の時間と空間を変化させる効果を持ち、伝統的な陸海空ごとの戦役の区別は時代遅れとなり、戦略・作戦・戦術という3つのレベルに分かれた概念的枠組みも同様に時代遅れとなる。


■米軍公式文書
・90年代後半から2000年代初めにかけて発表された「ジョイントビジョン2010」「米陸軍ビジョン」「オブジェクティブ・ フォース・コンセプトについての白書」において、公式に、ランドパワーの戦略思想
 を包括的に詳細に述べられている。
・これら文書でしめされた戦いの特徴としては、地上部隊の作戦が「線形」なものから「非線形」なものへ移っているという認識であり、過去のものよりもはるかに機動性を備えた部隊が、戦場全体に分散した
 状態にある。
・非線形な作戦は、分散して非連続であり、戦場全体に分配されていながらも同時に行動を行うようなもの。敵軍を次第に包囲するような過去の段階的で線形な作戦とは対照的に、敵軍全体を航空・地上双方からの
 攻撃にさらすアプローチ。
・部隊を集中させずに集中の効果を上げる。


■求められる兵士像 ロバート・スケールズ
・米退役少将。元陸軍大学校長。
・現代の兵士はには知性と間接性が必要であることを強調。
 過去の直接的で行動志向のリーダーシップとは対照的に、今日の戦いの本質は「間接的リーダーシップ」
 を必要としている。これは「接触による直接的なものではなく、リアルタイムで考え、企図によって
 戦場に影響を与える能力」
・「戦争はこれまでにないほど頭脳ゲームになっている。戦争は相手の意図を読むこと、信頼を構築すること反対意見を説得すること、そして認識を管理すること」が火力とテクノロジーと同じくらいに勝利の要件
 となっている。

以上、次回はエアパワーの理論についてご紹介予定です。
本書をご紹介することで軍事戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。



ART by Chris Foss









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Posted by もじゃもじゃ  at 11:00 │Comments(0)◎戦略関連現代の軍事戦略

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