2016年09月21日

現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦期

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめられてお り、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

さて、今回は冷戦期のゲリラ戦の理論として、ガルーラとトンプソンをご紹介します。
前回のロレンス、毛沢東が、反乱側の理論だったのに対して、ガルーラとトンプソンは仏・英という植民地を支配する側からの視点から「対反乱」についての理論を提唱しています。

■ガルーラの対反乱作戦
・ダヴィド・ガルーラはフランス軍士官として、1950年代にアルジェリア戦争で戦った経験を持つ。
・著書「対反乱作戦:理論と実践」(1964年刊)の中で、対反乱の原則と具体的な行動指針を記している。
・「第一の法則」
 対反乱側には地元住民からの支持が(反乱側と同じように)、必須である。反乱側勢力を武力で排除することは難しくないが、排除した後の状態を維持するには、住民の支持がなくてはならない。
・「第二の法則」
 住民からの支持の獲得を中心としたもの。「単に同情や承認を得るだけでなく、反乱勢力に対する戦闘への積極的な参加をいかに得るかだ」
・「第三の法則」
 (協力してくれる)住民に対する(反乱側の)報復の脅威を解消するためには、反乱勢力や彼らの政治組織に対する軍・警察の作戦の成功が必須である。住民の安全が第一に確保されなければならない。
・「第四の法則」
 (ガルーラが著書に記した)手段や作戦は、徹底的かつ長期に渡るものでなければならない。
 国全体で一気に実施することはできないとしても、地域ごとに連続して実行されなければならないのである。
これは近年になって「油のシミ」アプローチとして知られるようになっている。
現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦期



■トンプソンの対反乱作戦
・英空軍士官。50年代のマラヤ、65年以前のベトナムでの実戦経験がある。
・著書「共産主義反乱の打倒」(1965年刊)の中で、問題の解決は、治安維持の手段だけでなく、反乱に関わるあらゆる政治、社会、経済を含めた全般的な計画の文脈の中で考えるべきものであると主張。これは、現在の「政府全体」「包括的な」アプローチに似たもの。
・「ゲリラを国内法の保護の外で対処したいという誘惑は大きいが、それでも対反乱作戦はあくまで法の下で実行すべきである」
 これができなければ、支配を再確立しようとする政府の長期的な正統性(レジティマシー)が崩れてしまう。
・トンプソンもガルーラと同様に、対反乱の主要なターゲットは住民であるとしている。また、「油のシミ」アプローチは人口や経済活動の多い都市部から始めていくべきとしている。
現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦期



次回は冷戦後のゲリラ戦の理論として、1980年代から多く出てきた「反乱、対反乱」「新しい戦争」についてご紹介します。


「現代の軍事戦略」をご紹介することで軍事、戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。





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Posted by もじゃもじゃ  at 11:28 │Comments(0)◎戦略関連現代の軍事戦略

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