2016年10月06日

現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦以降

もじゃもじゃです!

「現代の軍事戦略入門」
(エリノア・スローン著 奥山真司、関根大介訳)
本書は、軍事戦略理論を古典から現代までコンパクトにまとめられてお り、軍事戦略の変遷を一般の読者でも理解できる入門書です。
なかなか知ることのできない、現代の戦略理論に重点が置かれている一方、基礎となった古典的理論にも、目配りされております。

さて、今回は「ゲリラ戦の理論 ~冷戦後」としまして、クレピネビッチ、ファン・クレフェルト、リンド、ハメスを紹介します。


■アンドリュー・クレピネビッチの反乱、対反乱作戦
・本ブログの「ランドパワーの理論 現代編」でもご紹介した、アンドリュー・クレピネビッチ(米陸軍退役中佐)は、「米陸軍とベトナム」(1986年刊)の中で、「米軍はベトナム戦争の本質をとらえることに失敗した」と正面から指摘した最初の人物の一人。
・対反乱作戦では現地住民の「心と信頼をつかむ」ことが重要であり、その為には政府の多くの機関の協力が必要であり、軍はその中のたった一つの機関に過ぎない。
・クレピネビッチの功績は、2010年代には一般的であるが、1986年時点では注目されていなかった下記の事柄を指摘した点にある。
 ①反乱・対反乱戦が通常戦とは大きく異なるものであること。
 ②米陸軍が対反乱で戦えるよう訓練・組織化されていなかったこ  と。
 ③米陸軍が将来最も直面しそうなのは、低強度戦や対反乱戦であ  ること。


■現代3大軍事戦略家 マーチン・ファン・クレフェルト
・グレイ、ルトワックと共に現代の3大軍事戦略家の一人。エルサ レム大学の学者。
・将来の戦争は国家主体ではなく、非国家主体の戦争になると指摘。クラウゼヴィッツ的な世界観による三位一体戦争(国家+国民+軍隊)というのは、「戦争は主に国家、厳密にいえば政府により行われるもの」という前提であったが、この時代は終わりをつげ、「非三位一体型」、もしくは「ポスト・クラウゼヴィッツ式」の戦いに取って代わられつつある。


■リンドの第四世代戦
・非三位一体式戦争の視点から第四世代戦を提唱。近代史における戦争は、三つの特徴的な「世代」を経て発展してきており、現代は「第四世代」にうつりつつある。
・「第四世代」は、戦場におけるさらなる分散化、作戦の速度とテンポの向上、集中化された兵站への依存度の低下、機動と分散のさらなる強調、小規模でより機敏な部隊、はっきりした前線や戦線のない「非線形」な戦い、統合作戦への依存度の増加といった要因によって特徴づけられる。
・非国家主体による「第四世代戦」の指標として、「敵の前線から後方への焦点の移動」と「敵の強みをそのまま対抗手段として使う」の2点がある。「敵の前線から後方への焦点の移動」は、非国家主体のテロリストは、直接敵軍隊を戦うのではなく、その後方(敵軍隊の母国)にいる一般人をターゲットとするということ。「敵の強みをそのまま対抗手段として使う」とは、敵(主に西側自由諸国)の社会の自由とオープンさを利用し、その社会に入り込み直接破壊活動を行ったり、ネットやテレビのニュースを使って心理戦を仕掛けたり、麻薬を密輸入したりということ。

■ハメス 
・元米海兵隊大佐。著書に「投石器と石:二十一世紀の戦争論」2004年刊。
・第四世代戦は反乱の発展形。
 第四世代戦とは「政治、経済、社会、そして軍事など使用可能なネットワークをすべて使って、敵の政策決定者に対して、彼らの戦略目標は達成不可能であったり、獲得可能な利益はコストがかかりすぎるものである、と信じ込ませることにある。」

以上。
次回「新しい戦争学派」に続きます。
現代の軍事戦略 ゲリラ戦の理論 ~冷戦以降


「現代の軍事戦略」をご紹介することで軍事、戦略への理解を深め、複雑な国際情勢をマスコミ等に踊らされることなく、自身で考える一助にしたいと思ってます。
また、本ブログをきっかけに一人でも、本書を含めた戦略書を手に取って頂き、平和や戦争への理解を一緒に深めてくれるとなお嬉しく思います。





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Posted by もじゃもじゃ  at 11:28 │Comments(0)◎戦略関連現代の軍事戦略

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