2016年08月29日

プレ・アポカリプス

もじゃもじゃです!

前回ご紹介したベン・ウィンタース著「地上最後の刑事」
3部作の2作目「カウント・ダウン・シティ」3作目「世界の終わりの7日間」をつづけて、読了。
人類の滅亡直前(プレ・アポカリプス)というテーマが面白くて、3作目入手に時間がかかった際に、同じテーマの井坂幸太郎著「終末のフール」も併読。

まず、地上最後の刑事3部作。これは、最後までハードボイルドな世界でした。
1作目が、隕石の衝突で世界が滅亡するまで6か月前。そんな中で殺人事件を追い、2作目では滅亡まで3か月の世界で行方不明の男を探し求めた主人公パレスは、3作目ではついに滅亡まで7日間の世界で、妹を探し求めます。
妹は隕石の衝突で地球が滅亡するのは、政府の陰謀だとするグループに属し、隕石の軌道を変える力を持つ科学者を確保すべく行動。謎の組織と共に、兄パレスの前から消えます。
本当に地球が滅亡するのか?という謎を読者に抱かせつつ、妹探しの旅は展開します。

3作目は、妹との絆や家族の物語となるどころか、3部作の中でも最も終末の惨状がひどく感じられ、妹を探す旅も陰惨なものとなります。
もともと、終末を目前にした世界をそれほど悲惨な描写をすることなく描き、若き主人公パレスのひたむきな探求心と呼応するように、ヘビーな状況の中どこか一抹の清涼感や救いのある世界を描いてきた作者にも、3作目ではどこか荒れた感じが漂います。(当然といえば当然か)

対照的に「終末のフール」は同じような状況(小惑星の衝突で3年後に地球が滅亡する)で、日本のお茶の間で夜8時か9時頃から始まる手垢のついたテレビドラマのような「家族のドラマ」を短編の連作で描きます。
「地上最後の刑事」を読んでいなければそれなりに面白かったのかな?とも思いますし、ハードボイルドものとは当然物語の質感が違うので好みの問題もあるとは思いますが、ちょっと能天気すぎて私の好みではありませんでした。

「地上最後の刑事」3部作に戻ると、1作目で感じた「人は残りの命を何に使うべきか?」というテーマは、続く2作では展開されていませんでした。しかし、だからと言って、面白さが減じるわけでは当然なく、ミステリー的にみると2作目が最も面白いと思います。(PKディック賞を受賞)
2作目まで読むと、当然結末・3作目を読まざるを得なくなるので、2作目と3作目はいっしょに購入することをお勧めします。1作目は文庫なので本屋で入手しやすいですが、2,3作目は文庫化されておらず早川のポケットミステリーなので本屋での入手も難しいかと思います。(ま、ネットで購入するのが安心ですね)
プレ・アポカリプス












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Posted by もじゃもじゃ  at 11:28 │Comments(0)ミステリー・ハードボイルド小説

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